相続相談事例集:祭祀承継の在り方とは

最近、遺産分割協議書に祭祀承継を盛り込んで欲しいという依頼が多くあります

原因として、
●故人の近隣地域に、子世代が誰も住んでおらず、誰が墓守をするかをはっきりさせたい。
●田舎において、祭祀の承継者は親類・近所付き合いをすることが多く、そのために多くの出費を負担する。祭祀承継者は相続財産の中からその負担分として一定額を相続したい。
と考えるようです。

核家族化と住居移転に伴い、先祖代々の土地に住まないケースが増えています。

お墓をどのように守るか、また、親類や近所付合いの費用をどのように見積もるかが、相続の重要なポイントとなってきています。

【祭祀承継が問題となりやすい事例】
◆相続人は配偶者(後妻)と先妻の子。
◆配偶者は故人の墓守を行わない。
◆配偶者は土地、建物を売却し、他県に移住予定。
◆遺産分割協議後、長男は海外に転勤。
◆相続人である娘達は他県に嫁いでしまっている。
 
永代供養をすれば事足りるのか・・・。祭祀承継の文言すら死語化する可能性を秘めている昨今において、悩ましい問題です

 

Check!

祭祀財産は、相続財産には算入されません。また、相続放棄をしても、祭祀財産を承継することが可能です。祭祀承継は、遺産相続とは別のものと考えられているからです(民法897条)。

とはいえ、現実問題として祭祀承継には出費が伴います。争続の火種を作らないためにも、エンディングノートや遺言の付言事項の中で、祭祀承継者を指定し、その分の費用として取り分を多くした財産分けを明文化しておくことが望ましいでしょう

また、相続する側も、「ただ財産だけを相続すればいい」というのではなく、故人や祖先の想いも含めて承継していくという敬意と感謝の念も必要だと思われます。