専門家にインタビュー「家族信託にかかる税金は?」「家族信託の契約状況は?」

専門家:呉 静香さん(司法書士)

聞き手:米田貴虎(一般社団法人相続手続カウンセラー協会代表理事)

家族信託に適した人は?

米田:税金関係はどうなりますか?
呉:
●名義や権限は移りますが、贈与ではないので贈与税はかかりません。
●不動産の登記をした時の登録免許税はかかります。
●受益者が亡くなった場合には、相続税がかかります。受託者に所有権は移っていますが、空っぽの価値という考え方です。
●受益権を譲渡するとそこに課税されます。
●固定資産税の納税義務者は受託者ですが、信託口口座の中から信託費用として支払うので、実質負担者は受益者になります。
なお、家族信託と節税は全く関係がないと思っていただいてもかまいません。

 

家族信託の契約状況は?

米田:日本公証人連合会の調査によると、2018年の民事信託数は全国で2223件、公正証書遺言は11万471件だったようですね。
 
呉:やはり、「遺言ありきの信託」だと思います。
遺言がベースにあって、遺言では補えないもの(=生前に売る必要が出てくるもの)がある場合で、なおかつ、それを託すことのできる「信頼できる家族」がいる場合に限り、家族信託をするというのが基本的な考え方です。

遺言+αとして、家族信託があるということですね。マスコミは「信託」「信託」と騒いでいますが。
 
「認知症対策=家族信託」だとマスコミがあおっているため、ご相談は多いですが、実際に家族信託が適していらっしゃる方は相談者の5分の1くらいです。遺言や任意後見など、違う対策を取られる方も多いです。