相続相談事例集:自称節税完璧ママ

Yさん(女性、85歳)は、ご主人と息子夫婦と同居しています。息子の他に長女がひとり。Yさんはご夫婦とも、元教員です。結婚後は家庭に入り裁縫の内職をしながら家庭を守ってこられました。趣味は料理と貯金。そして、孫の部活(野球)の応援です。明るい息子家族に囲まれ、何不自由なく暮らしておられました。

そんな矢先、Yさんのご主人が突然亡くなりました。Yさんは驚きと悲しみとで、何も手につかない状態でした。しかし、その後Yさんは、かつてないほどの忙しさに追われることになります。

葬儀の後始末、保険証の返還手続き、年金の停止、未支給年金の受領、銀行手続き、車の名義変更等々。何とかさまざまな手続きを終えたYさんでしたが、相続税申告と不動産の名義変更だけは、どうしてもできないということで相談に来られました。

財産を調べていくと、ご主人名義の預貯金だけでなく、子ども名義の定期があることがわかりました。これは、Yさんがご主人の預金から子どものために毎月、信用金庫に数万円ずつ払っていた定期積立でした。加えて、ご主人が掛けていた子ども名義の生命保険があることも判明しました。

これらは名義預金や名義保険といって、ご主人の相続財産に加わることを伝えるとYさんは驚きとともに怒りが沸いてきました。この保険や預金は懇意にしていた銀行の行員さんや保険会社に勧められたものだったからです。契約時にきちんと説明をしてくれていたら、別の選択肢があったかもしれません。Yさんはこれらがすべて、節税になると考えていたのです。

相続税申告にはこれらの預金の残高証明書や保険の解約返戻金証明書が必要だと伝えると更に落胆されました。でも、あとに続く子供達のためにもしっかりと漏れのない申告が必要とわかり、手続きを進めていかれました。

節約、節税、そして子どもへの思いやりが強い人こそが遭遇する落とし穴です。 
しっかりとした知識をもとに節税対策を進めていきたいものです。